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パノラマ作成の環境づくりについて

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11th moonの冨士さんに、パノラマ作成についてのとてもためになるコメントをいただきました。
コメントではもったいないので、エントリーとして投稿しておきます。いろいろ調べてみましたが、機材の選び方などについて、ここまで細かく書いてあるものは見たことがないです。

以下、引用です。


 こんにちは、最近はパノラマを撮っている冨士です。

 以下、この3年間に私が集めた情報と経験により、いくつかコメントします。


1. デジタルカメラ


 パノラマを撮る場合、カメラはメーカーよりもセンサーの種類で決めるべきです。理由は太陽を撮る機会が多いからです。太陽を撮った場合、原理的な問題からCCDではスミアが起こります。その点CMOSにはスミアがありません。

 現在C-MOSを積んだ一眼レフ式デジタルカメラは少数派で、上記のK-100はCCDです。C-MOSを積んだカメラは、CANONの全機種とNikonのD2Xぐらいです。

 また、ダイナミックレンジもC-MOSの方が広いので、パノラマをHDRI化したいのであれば、その点からもC-MOSにすべきでしょう。

2. レンズ

 パノラマを撮るレンズにはあまり選択肢がありませんが、基本的にズームレンズは避けるべきです。理由はやはり太陽を撮る機会が多いからです。一般的にズームレンズは単焦点レンズに比べて多くのレンズから構成されていて(約2倍)、その結果より多くの明るいリフレクション(レンズ内部で多重反射にした光による像)を発生します。 

 以上、基本的にカメラもレンズも「太陽を撮ってはいけない」という暗黙の了解のうちに作られているので、普通の性能比較やサンプル写真からは分からない注意点です。ちなみに、以前NikonD200でスミアの問題がクローズアップされた時、Nikonは非公式にですが「そういう特殊なもの(つまり太陽)は撮るな」と言ったそうです。

 同時に、ズームレンズは画角を固定できないので、撮影時に生じる誤差もその分増えます。スティッチソフトの宣伝ではどんな画像でも誤差を補正してつなげるように書いてありますが、原理的に「パターンの無い画像(例えば青空)」や、「パターンが常時変化する画像(例えば水面)」や、「パターンが読めない画像(例えば砂利)」などは誰もつなげません。

 まあ、全面パターンがないなら正確につなぐ必要もないのですが、それではそもそも撮る意味がありません。普通は、ある部分にパターンが無くても他の部分に建物等が見えていて、正確につながなければならないものです。

 そういう場合に一番頼りになるのは、その直前に撮ったパノラマです。もし、あるパノラマが正確にスティッチされていて、かつ三脚や架台の精度が高ければ、その直後に撮ったパノラマのスティッチ条件も同じになるはずだからです。つまりパターンに依存する必要がありません。

 このような理由から、私は撮影前に必ずその日のリファレンスとなるパノラマを、新宿の高層ビル街のようなスティッチしやすい場所で撮るようにしています。

3. 架台

 市販されているパノラマ撮影架台の精度はどれも似たようなものです。安いのを買った方がいいでしょう。

 確かに高い架台はいい材料を使って丈夫にできていますが、その分関節が多く、自由度が高くなっているため、それほど精度があがらないのです。毎日カメラやレンズを変えていろんな条件で撮る、というのでなければ自由度の低い安い架台で十分です。

 むしろ、パノラマを撮るときの誤差の大半は三脚とカメラの固定部で生じるので、こちらに投資した方が効果があります。

4. 三脚

 三脚は非常に重要です。特にパノラマの場合は強度や耐久性よりも、「ガタがない」ことが求められます。これも一般的な撮影とは異なる点です。

 一般的には、重いカメラを安定して支えられて、過酷に使っても壊れないのがいい三脚だとされます。そのため余裕を持たせた単純な構造(例えば、マウントにパイプを通して横からねじで締める等)を採用する三脚が多くあります。
 
 普通の撮影はこれで十分なんですが、パノラマの場合後でスティッチする必要があり、前後に撮影した画像との関係が常に一定でなければなりません。したがって、強度的には劣っても、ガタの無い繊細な構造(例えば、マウントに割を入れ、円周方向にパイプを締め付つける等)の三脚を選んだ方がいいです。

 私は以上の理由からGitzoの3型を使っています。架台に投資するよりはこっちに投資した方が絶対にいいいです。

5. カメラの固定法

 もう一つの大きな誤差はカメラ周辺で生じます。これらは次の3つの方法によって、劇的に改善できます。


5a. なるべく軽いカメラとレンズを使う


 当然ながら、同じ三脚と架台なら、カメラとレンズが軽い方が変形や振動は減ります。この点からも、大きく重くなるズームレンズはお勧めできません。

 また、この理由から私はCANON EOS kissDNという軽いカメラを使っています。どうせ多数の画像をスティッチする訳だし、基本機能しか使わないので、D2XやD1sのような高価で重いカメラを使う意味はありません。
 
 また、当然のことですが、カメラは一番軽い状態にして使います。つまりオプションのバッテリーグリッップやストラップなどは全部外します。


5b. あらゆる方法を使ってカメラを架台に固定する。そしてなるべく外さない


 最大の誤差は、カメラを固定する1/4インチねじの部分で発生します。なぜなら、このねじは1個しか無く、この軸周りの角度を決める方法が無いからです。これは個々のカメラの設計以前にカメラの共通仕様が持っている欠陥です。

 この欠点を補うためにカメラ底面にピン穴が空いている場合がありますが、規格化されていませんし、弱いですし、1/4インチネジまでの距離が短いのでほとんど効果がありません。

 普通の写真なら特に問題にすることもありませんが、パノラマの場合致命的なので、なんとかもう一カ所固定しなければなりません。ここで、私がお勧めする一番いい場所は「レンズ先端」です。

 幸いなことに、超口角から魚眼レンズはレンズキャップをつけるために「ビグネッタ」というリングをレンズ先端周囲に追加できるようになっています(ねじ込みではない)。そのビグネッタを追加購入して架台に固定してしまえば、カメラ本体の1/4インチねじとビグネッタでカメラを十分正確に固定できます。

 架台にビグネッタを固定する技術が無ければ、「針金で巻いてエポキシで固定」でもいいのでやってみることをお勧めします。

 また、それでもカメラを一度取り外して取り付け直すと微妙に位置がずれるので、必要がない限りカメラを架台に固定しっぱなしにしておくと、一度作ったスティッチテンプレートを長く使い回せます。

5c. 無線リモコンを使う

 当たり前のことですが、カメラのシャッターを直接手で押せば、その力で架台が変形し、カメラが動きます。普通のケーブルリモコンでもないよりはましですが、逆にケーブルがカメラを引っぱって動かすというケースもよくあるので、無線リモコンをお勧めします。

 私は最初ケーブルリモコンで始めましたが、1ヶ月で無線リモコンに変えました。

6. スティッチングソフト

 私は既製のスティッチングソフトを使ってないので、お勧めはありません。昔一通り試してみましたが、ほとんどのソフトは途中で頭にきてやめました。唯一のお勧めはQuickTimeVRAuthoringStudioでしたが、既に販売中止になっています。また、QTVRASだとCubicVRが作れませんでした。

 3Dソフトが使えて、簡単なプログラムを組める人だったら自作することをお勧めします。HDRI化や、円形など特殊な形状にパノラマを変換する作業も3Dソフト内部で完結できます。またネットワークレンダリングもできて、非常に楽です。

 とにかく、スティッチソフトを選ぶ時によく考えなければならないのは、「できるかできないか」ではなく「どのくらいの品質のパノラマをどのくらいの時間で作れるのか」という点です。

 「できるかできないか」で言うなら、Photoshopでの手修正が前提の世界なんだから何でもできます。曲がった線だって描き直せばいいんです。しかし、1日かけて1枚しか作れないようなソフトだと正直言って続きません。撮影する楽しみやパノラマを見る楽しみよりも、スティッチする苦しみが勝ってしまうんです。

 実は私は1997年にもパノラマを作ったことがあります。この時は、QTVRASを使ってフィルムカメラで作る方法と3Dソフト内部で作る方法の二つを試しましたが、すぐに挫折しました。理由は、得られる成果に対して苦労が大きすぎたからです。

 今回1994年にデジカメと自作の架台、ソフトでパノラマを作り始めてからは、もう3年も続いていますし、仕事にもなっています。理由はいろいろありますが、一番大きいのはやはり「楽にたくさん作れるから」だと思っています。

7. パノラマのHDRI化について

 QT自体がHDRIに対応していないため、まだあまり作られていませんが、パノラマのHDRI化は非常に有効です。理由は、これも太陽を撮る機会が多いからです。

 一般的に、カメラで太陽を撮れば必ず白くつぶれ、逆に暗い部分はつぶれます。これは常識で、だから太陽にカメラを向けてはいけないと言われるのです。しかしパノラマの場合、「向けない」ということは前提に反するし、屋内や曇天、夜間だけに撮影を限るというのはあまりに寂しい話です。

 例えば、一般的に太陽が見えるようなコントラストの高いシーンを修正する場合、ガンマを上げて暗部を持ち上げますが、同時にどんどんノイズも上がってきます。逆にノイズが乗らないように露出を上げて撮影すると、今度は明るい部分がどんどん白くとんでいきます。つまり、太陽が見えるようなシーンでは「撮影しようがない、修正しようがない」という場合がほとんどなのです。

 また修正可能な場合でも、最適な露出と最適な修正が必要とされます。その結果、撮影現場では露出に気を使い、後で何時間もかけて修正することになります。しかし、適正露出と-2段、および-4段絞った3枚の画像を合成すると、ほとんどのシーンが修正可能になります。また、露出は適当、合成は自動なので非常に楽です。

 HDRIとはいっても、私がやっている3枚合成程度では十分な諧調を押さえられません。それでも、上記のように最終的に8btの画像を出すのが目的であれば十分です。言い換えれば、きれいな8bitの画像を得るために、4bit分の「余裕」を持たせる、というのが現在の私がやっているHDRIの本質です。

8. HDRIに付随して、カメラが撮影可能な色深度について

 ほとんどの一眼レフ式デジタルカメラは12bitの画像(RAW)を出力できますが、下の方はノイズだらけなので使えません。まともに使えるのは上から7?8bitだけです。これに比べて、露出を変えて撮った3枚の8bit画像を合成して作成した12bit画像は、上から下まで全てきれいに使えます。    つまり、同じ12bitでも両者の画質は全く違います。このような理由から、私はRAWは使わず全てJPEGで撮っています。

9. HDRIに付随して、HDRIの合成法について

 露出を変えて撮った複数の画像を合成する、という考え方は大昔からあります(おそらく天文学の中の太陽を研究する分野から始まった)。昔はフィルムでしたから、複数のフィルムに異なったマスクをかけ、多重露光して印画紙に焼き付ける、という手順で合成していました。

 90年代に入ってこの合成作業がコンピュータの中で正確に行われるようになった時についた名前がHDRIです。HDRIの要は「マスク」にあり、どのような露出で撮った画像にどのようなマスクをかければいいか、というのは理論と計算によって一意に求まります。

 しかし私はこの標準的なマスクを使っていません。理由は、標準的なHDRIが「動く物体」を想定していないからです。元々は太陽や空の観測を目的に始まった技術であるため、動く物体を想定する必要が無かったのでしょう。

 しかし、街中などを撮ればそこら中で人と車が動いていますし、雲や水面も細かいながら動いています。このような動くオブジェクトを標準的なHDRIで処理すると「黒い穴」ができてしまうのです。

 ですから、私は人間の見た目で自然な絵ができるようなマスクを自作してHDRIを作っています。こうすると合成された色や明るさが一部不正確になりますが、総合的に絵としてはよくなります。既製のHDRI合成ソフトは全て標準的なマスクを使っていると思うので、その点でもスティッチャーを自作してみる価値があると思います。

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